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さよなら歌舞伎町を見て

以下本編のネタバレを含む。

 

この話はとあるラブホテルに関わる人々の周りの人間ドラマを描いた映画であった。

結論から言うと「ラブホテルを題材にした話」「主人公の彼女役に前田敦子」の2点から前田敦子のエッチシーンがあるんじゃないかと期待する童貞ホイホイの詐欺コメディ映画だったと思う。

とはいえ内容自体はすごく良かった。

 

ラブホテルには一晩に何組ものカップルが訪れ、それぞれが様々な一晩を過ごす。

行為だけを見てしまえばただセックスがたくさんあるだけかもしれないが、そのセックスの中にも不倫や援助交際、アダルトビデオの撮影、デリバリーヘルス、枕営業といったバックグラウンドがある。

更にアダルトビデオの撮影のために訪れたのが自分の妹かもしれないし、枕営業のために訪れたのが自分の恋人かもしれない。

人生色々だねえ。

 

 

とりわけ、不倫のためにラブホテルを訪れた警察官が、そこの従業員が時効間近の犯罪者であると気づく話が印象的であった。

明日時効が成立するというところまで息を潜めて生きてきた犯罪者と、たった今自分の家族にとって大犯罪を犯している警察官。

正しさとは何かを問われるような、道徳的なシーンであった。

 

「セックスをする」という行為に至るためのお互いの心理状況などは、説明せずともある程度カテゴライズできるように思う。

これは単に私が軽々しく雑な気持ちで人とセックスをしたことがないからかもしれないが。

ラブホテルという題材はその点において、登場人物の心理状況をある程度カテゴライズした上で–––登場人物の心理状況にある程度前提を持った上で–––話を進められるため、複数の話が混在していても比較的すんなりと受け入れられた。

オムニバスのように様々なカップルのドラマが散りばめられていて、それでいてコンパクトにまとまっていて、とても良かったと思う。

 

ただやはりどうしても前田敦子の存在理由が最後までよくわからず、メッセージ性を重視したいのなら彼女を起用しなければ良かったと思うし、彼女のプロモーションムービーにしたいのなら道徳なんか捨てた話にすればよかったと思う。

そこだけが惜しい映画だった。